「集団を育てる」という意識小学校から中学校、高校、大学と、これまで学生が歩んできたプロセスには、常に子供たちがより可能性の大きな次のステージに上がることを応援する人たちがいた。両親はもちろん、学校の教師や塾の講師、家庭教師、近隣に住む人々などである。そうした周囲の温かい支援の目があって、子供たちは少しずつ成長していく。しかし、考えてみると、「社会人」というまったく別のステージに進む重要な段階に際して、それを適切に応援する人間が現状の就職活動においてどれだけ存在しているだろうか。「学生のやりたいことが明確になっていない」といった嘆き、諦めの声を企業人からよく聞く。確かに「社会化」が不十分で、世の中のことをよく知らず、自分の将来についても深く考えきれていない学生が多いことは事実だ。しかし、そうであればこそ、私たちのような就職支援業者も含む企業社会の側にも学生に適切なインプットを促し、「社会人」として成長する機会を提供する必要があるのではないか。
企業を中心とした社会・経済の仕組みや、市場において企業が成長し続ける理由、ビジネスの構造、他社とのビジネス上の違いなど、大学ではなかなか学びきれていないことを学生にインプットする機会を企業が積極的に設けることは大きな意味がある。 企業にとってのメリットという観点で考えても、私たちのような就職活動支援業者の目から見て、例年、優秀な学生の採用に成功している企業には、「集団を育成する」という視点が共通して存在しているという事実がある。
採用活動に取り組む際に「学生は成長する」という視点を持っているか否かは、大きな違いを生む。多くの企業はイベントやインターンシップなどを通じて、学生のリストを確保することには熱心である。しかし、リストだけでは現実的な価値は低い。それらの集団の学生に「気づき」を与え、時間をかけた継続的なフォローを行って自らの意識や行動を変えさせ、採用前から学生を自社にとって価値のある人材に育てていくという行動が必要なのである。そういう意識を持っている企業は多くはない。たとえば、大学三年生の夏休みにインターンシップ生として学生を受け入れたとする。そこで一緒に仕事をしながら気がついたこと、学生のよい点、努力すべき点などを誠実にフィードバックする。すると学生は「この会社は自分に正面から向き合ってくれたな」という印象を持つ。そして自分の学生時代の行動を「確かに甘かったな。改善しなきゃ」と感じ、意識が変わったその学生の行動は、翌日から少しずつ変わり始める。人事担当者はそういう学生とその後も定期的に会う機会をつくり、アドバイスを伝え彼らの成長を支援する。そして同時に面接官の目で成長度合いを見極める。夏に出会い、秋、冬とどのように成長しているかをフォローすることで、学生の成長曲線を見ることができるのだ。いわば見込みのありそうな学生に対して明確な意識づけをしたうえで一度、野に放ち“放牧“する。そして時を見てまたコンタクトを取って、その育ち具合を見るのである。

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